エッセイ「とあるアナログ絵描き」
小さい頃の事を思い返したり
過去なんて引き返せないし
取り返せない。
今日も誰かが生まれて
今日も誰かが死んでいく。
毎日が誰かの誕生日で
そして誰かの命日。
小さい頃にとある子どもがハムスターを飼っていた。
普通に家族として可愛がっていた。
「レムくん遊ぼ！」
子どもは無邪気にレムくんに懐いていた。
レムくんもその子どもに懐いていた。
近所の幼馴染も可愛がりに来るくらい
レムくんは可愛かった。
でもレムくんを可愛がっていても
当時4歳の子どもは
上手く育てられなかった。
家の近所の幼馴染に
レムくんをあげた。
レムくんに見に毎日幼馴染のところに行った。
レムくんも無邪気な若いハムスター
環境が変わればストレスも溜まっていく。
誕生日が近づいた時にいつものように幼馴染のところに遊びに行ってレムくんと遊んだ。
その時がレムくんと遊んだ最後だった。
レムくんは誕生日の前日に幼馴染の家のベランダから飛び降りた。
マンションの4階だったから助かる筈が無かった。
誕生日の前の日がレムくんの命日になった。
悲しくて泣いていてもレムくんは帰ってこない。
その子は初めて死を学んだ。
誕生日の日に近くの公園の木の下に
幼馴染とレムくんを埋めに行った。
誕生日にその子はレムくんをもっと可愛がってあげればよかった
もっと遊んであげたらよかったと
当たり前に過ぎていく日常の中で
自分の誕生日に初めて自分の家族のお葬式をした。
5歳の誕生日だった。
親は慰める事はあったけど
その子はあまりにも辛すぎた。
当たり前の日常が過ぎていく。
時が立ってその子は小学生の頃にテレビで
亡くなった人の第2の誕生日というのを知った。
まだスマホやましてやインターネットなんて自由が効かない時代。
その子は自分の誕生日に埋めに行ったレムくんの第2の誕生日に
自分の誕生日を選んだ。
前日に亡くなったレムくんが
第2の誕生日を迎える。
そうその子は考えるようにした。
無邪気に誕生日を祝って貰っている
幼い子どもとは違った。
親が「ロウソク消すよ」
とその子の誕生日に言うと
「レムくん誕生日おめでとう！」って心の中で言うようになった。
色んな事を成長するに連れて経験して行く。
普通の日常だと感じていても
先生からいじめられたり
ましてや普通に勉強が下手なごく普通に
いるようないじめられっ子。
毎日がやはり過ぎていく。
当たり前にその子も大人になった。
ネットやスマホ
色んなSNSを知るようになった。
その子は空想の生き物を絵で描くようになった。
画家を目指した。
Twitter等で作品をツイートしたりという便利な時代。
色んなお絵描きアプリやデジタルな絵の描き方があった。
でもその子はアナログ絵にこだわった。
デジタルツールを使っていても
絵はアナログで。
当たり前にやはり日常は過ぎていく。
一緒に暮らしていたその子のおばあちゃんは
レムくんと同じく誕生日の前日に亡くなった。
見渡せばその子の心の中は空っぽだった。
何回も誰かが死んでいく。
生まれた命はやはり
いつか亡くなってしまう。
当たり前に過ぎていく日常の中で
色んな人を亡くす。
誰しもがある事で
その子は悲観していても
「これじゃダメだ」
ってゆっくり気づいて行く。
人の生き死にや
動物の生き死になんて
成長する過程で絶対に訪れる事なんだから。
当たり前の日常の中でその子は
とあるミュージシャンの「バースデーソング」を聴いていた。
誰しもが共感出来そうな歌詞。
当たり前に過ぎていく日常の中で
辛くなってもその曲を聴くのをやめなかった。
今日も誰かが生まれて
そして誰かが死んでいく。
それは動物でも人間でも同じで
その子はTwitterに誕生日に舞い上がる風船や
春の桜の花びらが散り行く姿をみていた。
「レムくんに風船をあげたいな。」
桜を何回も見に行った。
当たり前に過ぎていく日常の中で
「今年も咲いてくれてありがとう」
と
桜に感謝しながら
レムくんの第2の誕生日を今年も迎えた。
誕生日ケーキのロウソクを消す時にやはり
「レムくん誕生日おめでとう」
と心の中で唱える。
当たり前に日常はまた過ぎていく。
今日もやはり誰かが生まれて
今日やはり誰かが死んでいく。
当たり前に過ぎていく日常の中で
人はどれだけその人や
家族にしてあげられるのかな。
辛くても毎日は過ぎていって
日常は当たり前のようで当たり前では無いのかも知れない。
辛くなっても過去なんて引き返せない
過去を変えたところでその人や
その家族の寿命は決まっている。
どうしようもない日常の中で
今日を精一杯生きて行くしか無いんだ。
その子はまた来年桜の咲く頃に
レムくんの第2の誕生日に
「レムくん誕生日おめでとう」
と唱えるだろう。
今日も1日が過ぎていく。
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