エッセイ「桜」
地元の駅にあった毎年恒例に咲いている、1本の桜の木があった。
毎年春になると、地元駅の桜を見ては、桜の木の下で、手を合わせていた。
地元の人も毎年見ていた桜の木は.......
儚くも剪定されてしまった。
今年は妻と一緒に地元駅の桜を見ようと地元の桜が咲く頃に、
地元の道を歩いていた。
神社の桜並木も剪定されてしまった。
妻と一緒に地元を手を繋いで歩いていた。
父の事も「お父さん」と呼ぶようになった妻と、
手を繋いで僅かながらに咲いていた桜の木を見ていた。
神社に少し残った桜の木を見に行った。
見事に咲いていた桜の木の下で自転車を止めて、
散りゆく桜の葉を見ていた。
帰宅すると妻が待っていた。
手を繋いで歩いていた妻の手の温もりはいつまでも暖かい。
剪定されてしまった桜の木を惜しみつつも、
妻との散歩にまた桜の木を見に行きたいと、
タバコを吹かしながら、溜息をついた。
日常は早く過ぎて行き、「ありがとう」と妻へ感謝をする気持ちを、
当たり前の日常の中で噛み締めた。
桜が散り、季節は夏になるだろう。
春の終わりに桜の散る見事な葉が零れ落ちる姿は美しく、
また妻と一緒に地元の道を歩いてみたいと、
まだまだ青二才ながらに手を老いても繋ぎたいと、
作業部屋から外を眺めていた。
雲は白く、空は青い。
また来年の春も妻と一緒に桜の葉を見ていたい。
ありがとうを込めて。
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